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ワンダーフォーゲル

FF5、DFF、クロトリなどを気ままに愛でる。

ロスト・トレジャー [後]

ゴル兄さんが最後全部もってった!! お、恐ろしい人だ・・・・!
もっと月兄弟全面押しになる予定だったのに、フタを開けてみればみんな結構出たがってこの結果。おかしいなもっと月兄弟とおかしらがなんやかんやなる予定だったのに。
混沌おかしらは油断すると登場人物数がいつの間にか大変に増えて行くので気をつけなきゃいけないなと思いました←

結局出てきたキャラ:おかしら・バツ・たまねぎ・ティダ・スコ・ジタ・セシル・ゴル兄・ジェクト・雲・ミーシャ様・うぼぁ


※混沌ファリス



*********************



「出来た!」

1時間弱ほど経ったろうか。わいのわいのと雑談に興じていた中に、ジタンの腕が高々と上がった。
「へぇ~、上手く直ってるよ」
「どこが切れてたかなんて分かんないッスね」
「やるなぁジタン!」
見事に修理されたペンダントが、オニオンナイト、ティーダ、バッツの手を巡ってセシルの手に落ち着く。
「拾ったときも綺麗だったけど、こうして元に戻ったところを見るとこっちの方がずっと綺麗だね」
そう言ったセシルからペンダントを受け取り、ファリスが慣れた手付きでそれを首にかけ直す。元に収まった様を見て、ファリスは少し口元を弛めた。
「よしよし。ちょっとは機嫌直ったか~?」
「るっせぇな」
ケラケラと笑うバッツの声を、ファリスがうざったそうに払う。確かに、少しは調子が戻って来たようである。
「ありがとな、ジタン」
「いーっていーって。困ったときはお互い様だろ?」

「次はピアスだね。どうやって探そうか」
うーん、と策を考え始めたオニオンナイトを見てファリスが苦笑する。
「後はさ、なんとか自分で探してみるから」
そう言われ、オニオンナイトは「え」と眉をひそませた。
「いいのか?」
スコールの言葉に、少し間を空けて頷く。しかしその顔は、諦めてしまったように寂しげに笑っていた。
バッツが何か言おうかと口を開きかけたとき。

「なんだ、らしくないぞ」
ふとファリスの背後から、低音の良い声。
「それではこれは、お節介というものだったか?」

「兄さん!?」
「ゴルベーザ!」

振り返った翠眼と真っ直ぐ見据える藍玉の先には、黒衣の鎧を纏った人物が悠々と立っていた。
手の中に、白い海竜の牙を細工したピアスを持って。



溯ること数時間前。


「まったく理解出来んな!」
皇帝は声高に発した。その様子を、アルティミシアが扇をゆっくりとあおぎながら見ている。
「それならばちょっかい出さずにいればいいものを。物好きね、マティウス」
長椅子に横たえるように腰掛ける様は妖艶でいて優雅。皇帝はアルティミシアをフンと一瞥すると、摘み上げているピアスに視線を戻した。
「何を言うミシア。ああいう野生の生き物を従順に手懐けることが愉しいのではないか」
口元を扇で隠し、やれやれとアルティミシアが首を振る。
「本当に、男って漏れなく馬鹿だわ」
小さく呟きパチンと音を鳴らして扇を畳むと、肘を突きいよいよリラックスモードに入る。

一方皇帝は、未だまじまじとピアスを見つめたまま。
「こんな小汚い飾りのどこにそんな価値がある」
疑問の答を出せないでいた。

「そう思うなら返してやれ」

皇帝の手から、フッとピアスがなくなる。
「貴様! 何を・・・」
「価値が分からぬ者の手にあっても宝の持ち腐れ。つまらん物だと思うなら、その価値が判る者に返すべきではないのか?」
巨躯の割に足音と気配を上手く消し、ゴルベーザがそれを攫ったのだった。
「いじめっ子かお前は」
「そんな安っぽい下等な言葉で括るな! 私を!」
ゴルベーザの言葉に、アルティミシアがクックッと静かに笑っている。
「アルティミシア、お前も」
「あら、私があの野蛮な育ちの海賊にそこまでする義理はありません」
ツンとしたプライドの高い物言いに、ゴルベーザは呆れて米神を押さえる。

「とにかく、これは私が預かる。いいな」
「好きにしろ」
踵を返した皇帝が、カツカツとアルティミシアの掛ける長椅子に向かう。
「充分楽しませてもらった」
チェストに置いてあったデカンターからグラスにワインを注ぐ。刺繍も細かいアンティークの長椅子に腰掛けると、ふふっとさも面白そうに笑って見せた。

「・・・お前たちに大切なものはないのか?」
「愚かな質問だな、哀れな魔人よ」
「それを得るための、この戦いなのではなくて?」

もはやここに用はないと、ゴルベーザは早々にこの場を退散することにした。



「・・・というわけだ」
「あ、ん、の、厚化粧夫婦・・・!!!」
ゴルベーザの話を聞き終えたファリスが、ビキビキと青筋を立てる。
「よかったじゃないか。奈落の底に落ちたのではなくて」
大きな手が、器用にピアスをファリスの耳に取り付けた。


ファリスの手が戻って来たピアスに触れる。
「おかえり」
誰にも気付かれない小さな迎えの言葉を受け、白い牙がキラリと光った。

「さすが兄さん!」
「あの人、意外と世話焼きだよね・・・」
手を打つセシルの隣で、オニオンナイトがこっそりひとりごちた。


すっかり機嫌を取り戻したファリスが、ぐるりと集まった皆の顔を見回す。
「騒がせて悪かったな! みんな、ありがとう!」
「元気になってよかったよ。ファリスがその調子じゃないと、落ち着かない人が多いみたいだから」
にこにこと、セシルがバッツに「ね?」と同意を求める。それに「あぁ」とか「おぉ」だとか曖昧に返事をして、バッツが頭を掻いた。
「おれも、お守りの羽根落としたらテンション下がるだろうからな・・・」
「あー、そういやこの前も荷物ひっくり返して、『ないない!』って大騒ぎだったな!」
ジタンの思わぬ話題に、バッツが慌てて捲くし立てる。
「ちがっ、あれは! 無くなったらいけないと思って奥の方に仕舞い過ぎてどこにあるか分からなくなってだな」
「どっちにしろ、大騒ぎしたことには変わりない」
「スコ~ル~!!」
話の輪に、にわかに笑い声が上がった。

「セシル? どうしたッスか?」
ティーダが、笑いながらも憂き目がちなセシルに気付く。
「ううん。・・・ファリスは守りたいものがあって、大切なものがあって、素直に『ありがとう』が言えるのに・・・どうして混沌なんかに身を置いているんだろうって思って」
先ほどまでペンダントがあった手のひらを、ぎゅっと握る。
「それに、兄さんも・・・あんなに・・・」
「セシル・・・」
はた、と違和感を感じてそのセシルが伏せていた視線を上げた。



「あれ、兄さん? ファリス?」



捩れた世界の空間を出ると、そこは見慣れた石造りの神殿。
「セオ」
ゴルベーザの後ろを歩くファリスが、目の前にある大きな背中に声をかける。
「あのさ・・・ありがと」
「次からは気を付けることだ」
「ああ、そうする」
にやける顔を引き締めるようにして、早足で隣に並んだ。
「セシルとセオが見つけてくれなかったら、きっと戻って来なかった」
その足取りは軽い。軋む鎧の音とリズムの良い足音がしばらく続く。

「セシルの言う通りだな」
「へ?」
ふっと笑った声が、視線の先を指し示した。
「見てみろ。あれも、お前の勢いがないと調子が出ない口らしい」
「あ!」
そこには、未だ探し物をしているジェクトと暗闇の雲の姿。
「礼なら、あの2人にも言ってやれ」

「ジェクトー! 雲ー!」
ファリスの呼び声に、2人が一様にこちらを向いた。
「あった! 見つかったぜ!」
そこに全力で駆け出していく。

今夜の酒盛りもまた一段と派手になりそうだと溜息を吐き、ゴルベーザも早々に足を進めて3人の元に向かうのだった。



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  1. 2009/07/24(金) 02:54:02|
  2. DFF文章
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